宋家の三姉妹
(The Soong Sisters)香港映画 1997年 日本合作 2時間25分
監督:メイベル・チャン(張婉亭)
撮影:アーサー・ウォン(黄岳泰)
オリジナル音楽:喜多郎
キャスト:マギー・チャン(張曼玉)
ミシェール・ヨー(楊紫瓊)
ヴィヴィアン・ウー(烏君梅)
ウィンストン・チャオ(趙文宣)
チャン・ウェン(姜文)
1997年7月に香港が、1999年12月にはマカオが中国に返還された。しかし、まだ台湾問題は残っている。その意味で、1900年代初頭の中国を舞台に「三姉妹」の生涯を扱った映画といいつつも、「宋家の三姉妹」は、きわめて現代的な中国・台湾・アメリカを結ぶ課題を扱っているといえよう。映画の中心は宋慶齢であり、慶齢が中心となれば、中国の歴史観がおのずと反映される。しかし、宋靄齢の扱いも宋美齢の扱いもかなり客観的である。特に西安事件で張学良に軟禁された蒋介石のもとへ飛行機で出かけ、蒋介石を説得して第二次国共合作に持ち込むところが、映画の最大のハイライトであるが、慶齢・蒋介石への正当な評価をしているといえよう。逆に言うと、第三の国共合作をして欲しいといのが香港からのメッセージであろうか。ケ小平を始め血を血で洗う内戦を経験・主導した世代がほとんどいなくなった今、かっての国共合作よりは可能性は数段高いように思うが。
こうした誰でも知っている生の歴史を主題として扱うとすると、どうしてもストーリーの構成が平板になりがちであり、まして国父と呼ばれる孫文を扱うとなると、めったやたらのストーリーは描けないが、宋家の居間で三姉妹の父親チャーリーがピアノを弾きながら英語で「峠のわが家」を歌う宋家の家庭的臭いの場面、孫文と慶齢が京都の寺の境内で出会い愛を意識し始める場面、蒋介石と美齢の京劇観劇における恋の駆け引き場面などポイント・ポイントが全体を引き締めている。
キャストでは「芙蓉鎮」で夫役だった姜文は、今回、三姉妹の父親役を演じたが、孫文の友人としての気持ちと、慶齢の父親としての気持ちの微妙な揺れ加減を、ベテランらしく重厚な味のある演技で表現している。いつ見ても飽きない男優である。